SNSひとり言は誹謗中傷? 女性弁護士解説「特徴と法的責任」

 続くコロナ渦で、外食や旅行の擬似体験としてInstagramやYouTubeといったSNSをチェックする機会が、さらに増えましたよね。いまだからこそ、社会問題となっている「インターネット上の誹謗中傷」について理解を深め、伴うリスクを再認識していきたいと思います。


 インターネット・SNSの発展により、私たちが自ら情報発信をする方法や機会が格段に増えましたが、それとともに、「誰かの人権を侵害してしまう」ことも増えました。

 インターネット上の人権侵害には、個人情報を晒すなどのプライバシー侵害、他人が制作した著作物を勝手に利用する著作権侵害、差別表現(ヘイトスピーチ)など多数の問題がありますが、今回は、昨今、大きな社会問題となっている「インターネット上の誹謗中傷」について取り上げます。




 インターネット上の誹謗中傷の特徴として、「匿名性ゆえに表現が過激になる」「同調者が次々と現れ誹謗中傷の規模がコントロールできなくなる」などがあり、被害は深刻です。

 しかしながら、敵を見つけて攻撃、同調しあうことで安心する……という心理は、人間の本質的な部分ともいえます。

 このため、「誹謗中傷はいけない」と常識として理解している方でも、安易な正義感、興味本位、集団同調心理などで、気づかぬうちに加担してしまい、「加害者」となる例も数多くあります。

 「うっかり加害者」にならないための対策として、メッセージを投稿・送信する前には「読み返す」、数秒でもいったん「時間を置く」ようにしましょう。客観的な視点を持ち、冷静になることで、誹謗中傷への無意識・無自覚な加担を防げます。




 誹謗中傷の(一般的な)定義は「根拠のない悪口で相手を傷つける」ことです。


 

 上記のような投稿は、根拠のないものであった場合、誹謗中傷に該当するので、法的責任を問われる可能性があります。

 ①刑事責任として「名誉毀損罪(刑法230条)」「侮辱罪(刑法231条)」に、刑事責任が成立した場合は、②民事上も不法行為が成立し「損害賠償責任」を負うことに。また、③「懲戒処分」を所属企業から通告される可能性も。

 ①刑事責任は「特定の個人を対象」としていれば、成立します。中傷相手の氏名を文面に表記していなくても、投稿履歴などから推測できれば、特定の個人を対象としていることに。

 「ひとり言」に見せかけた悪口をはじめとする抽象的な表現でも、法的責任に問われる可能性があります。




刑事責任:名誉毀損罪と侮辱罪の違いは?

 両者の大きな違いは、「事実を示しているか」です。

 「”事実を示して”特定の個人の社会的評価を低下させるような内容」は名誉毀損の問題に、
 「“事実を示さずに”社会通念上許される限度を超えた侮辱的表現」は侮辱の問題になります。

 ちなみに、「Aは△△事件の犯人だ」という投稿(=刑事事件の犯人探し)が、真実であれば、社会の正当な関心事といえるため、名誉毀損にはなりません。デマであった場合に、誹謗中傷の問題になり、名誉毀損が成立します。






デマ拡散

 2019年8月に常磐自動車道であおり運転をし、相手を殴打した男性Aの車に同乗していた女性Bが、ガラケーで一連の行動を撮影していた事件。無関係の女性Cが犯人扱いされ、「『ガラケー女は女性C』だといったデマを大量拡散された」ニュースがありました。

 この女性Cは、デマを拡散した者のうち、公的な立場でありながら積極的に拡散をした市議(後に辞職)に対して、「名誉棄損による損害賠償請求訴訟」を提起し、先日、賠償責任が認められました(東京地裁令和2年8月17日判決)。

 また、性被害に遭ったジャーナリストの女性が、漫画家の誹謗中傷に対して損害賠償請求訴訟を提起した例など、近年、「名誉棄損による損害賠償請求」の訴訟事例は増えています。



リツイートは賛同行為

 また、直接的に誹謗中傷を投稿(ツイート)しただけでなく、シェア(リツイート)の場合でも、名誉毀損が成立し、賠償が認められています(大阪地裁令和元年9月12日判決〔控訴審:大阪高裁令和2年6月23日判決〕)。 

 これは、シェア(リツイート)は「投稿元の内容に賛同する意思を示して行う表現行為」といえるからです。

 軽い気持ちでシェア(リツイート)をしても、名誉毀損は成立し、訴えられ、賠償責任を負う可能性がある――ということを知っておきましょう。


 インターネット上の投稿の多くは、名前を名乗らずに匿名でなされます。

 しかし、匿名といっても、全ての端末にIPアドレスが割り当てられていますので、「発信者情報開示請求」などにより投稿者が特定される可能性があります。

 匿名であることに安心して誹謗中傷の投稿を続けていると、「被害者から発信者情報開示請求がなされている」という意見照会書がプロバイダーから届き慌てる、そして被害者から賠償請求をされる――といったことが、現実に起こり得ます。





 インターネット上では、自由に「自らの思いをつぶやく」ことができ、「不特定多数人の賛同を得る」こともできる、「見知らぬ人の言葉に共感してシェアする」こともできる、といった表現行為があります。現実社会にはない広がりや、可能性を秘めていますよね。

 しかし、「表現行為にはリスク・責任が伴う」ということをきちんと理解し、インターネット・SNSを利用していきましょう!